真言水天石柱塔

鹿児島神宮の近く、霧島市隼人町内山田地区には、水天を讃嘆する真言を刻んだ石柱塔が二基ある。

水の神様、水天(水神)の碑は頭にとぐろを巻いた蛇を被り、右手に蛇を持ったもの水神の文字を刻んだものが多いが、この真言水天石柱塔は、水天を表す梵字と「水天に帰命する」という意味の七語(真言)が梵字刻まれている。このように、真言梵字で表したものはとても珍しいのだそうだ。

野崎集落にある真言水天石柱塔

内山田地区には、天降川の上流を取水口とする宮内原用水が流れている。

石柱塔の一つは、野崎集落の宮内原用水が小田地区に分水する地点に建っている。またもう一つは、中道集落の宮内原用水から水を取り入れている溝の横に建っている。

宮内原用水は、天降川の上流部、水天渕を取水口とし、鹿児島湾奥を終点とする全長約12kmの用水路だ。水天石柱塔のある内山田地区は微高地で、宮内原用水が通じるまでは原野だった。それが、用水域全体で六千石を算出する田に生まれ変わったのだ。従って、当時の人々にとって、宮内原用水が通水したことはとても有難いことだったことだろう。そのため、水路が完工したことに感謝するとともに、水路が決壊するなどの災害がないように、また水による事故が起きないようにといったような願いを込めて、宮内原用水の要所にこの石柱塔が建てられたのではないかと思われる。

なお、石柱塔が建てられた年代は、はっきりとはしていないが、宮内原用水が完成した正徳6年(1711年)から暫くしてからだろうと推測されている。

隼人町の龍波見家の水天像

隼人町の角之下川沿いの水神碑

参考:隼人町の石造文化財