小さな、小さな六月灯

霧島市隼人町内山田の宮内原用水の小田への分水路起点の土手に、梵字の掘られた高さ1mくらいの「野崎の水神」と呼ばれる石柱がある。

隼人町教育委員会発行の「隼人町の石造文化財」によると、一番上の梵字は水の神様である水天を表しており、その下の梵字七文字は「水天に帰命し奉る」という意味をもっているそうだ。このように、梵字で仏を讃嘆することばを表しているのはとても珍しいらしい。

宮内原用水が完工したのは正徳6年(1716年)だが、この石柱はそれから暫くしてから建てられたものと思われる。

以前は、この水神の前で、旧暦6月28日に野崎地域の人々による六月灯が催されていたが、過疎化が進む中、自然消滅していた。

ところが、平成になると野崎地域は逆に宅地化が進み、それまで11戸だった自治会員は徐々に増え、今では45戸になっている。

そうした中で、10年ほど前から自治会では、旧暦6月28日に近い土曜日に水天六月灯を実施し、水神前に子供たちが描いた灯籠を飾るようになった。

今年は旧暦の6月28日が今日8月15日に当たるため、六月灯は直近の土曜日の13日にあり、児童たちの描いた灯籠が飾られた。

灯籠の数もわずか11丁という小さな、小さな六月灯だが、変貌する地域の中で、唯一歴史を感じさせる行事である。今後とも繋いでいって欲しい。

なお、最も大きな六月灯鹿児島市内の照国神社のもので、毎年10万人の参拝者で賑わう。